明豊高校 県大会

 新生明豊ミラクル再び

エースナンバーをつけた山本(3日・甲子園練習)
 対外試合禁止糧に成長  人間力磨いて再出発

 第86回全国高校野球選手権大会は7日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。大分からは激戦続きのトーナメントを粘り強く戦い抜き、3年ぶり2回目の栄冠を勝ち取った明豊が出場する。前回出場時は3度、南こうせつ氏の歌声を聖地に響かせた明豊。今夏は新生明豊として、全員野球で上位進出を目指す。

 別大付と明星が法人合併して誕生した明豊(谷本親史校長・632人)は今年で開校6年目。野球部は旧別大付の流れをくみ、99年夏に明豊として夏の大分大会に初参戦。この時は初戦敗退となったが、翌年はベスト8に進み、開校3年目の01年に、大分大会を初制覇。甲子園でも旋風を巻き起こしてベスト8に進出。明豊の名は一気に、全国に知れ渡った。
 輝かしい甲子園デビューを飾った明豊だったが、チームにとって記念すべきこの年は、大きな転換期にもなった。不祥事から対外試合禁止処分が科され、栄光から一転、チームは苦しい状況に追い込まれた。指導陣は責任を取り、部員も大きな目標を失った。危機的な状況だったが、ここから新生明豊が始まった。
 中学・高校野球部の総監督を務めていた大悟法久志現監督が現場に復帰。高口健二部長、浜田健次、大久保真吾両コーチらとともに、チームの立て直しを続けた。「よろい、かぶとに身を包んで身構えていたようだった」(大悟法監督)という当時の部員たちに、「高校野球の目標は甲子園だけではない」と説き、その後の人生に向けた人間力を磨くことから再出発。
 ボランティア活動などを通じて、選手たちの意識改革を進める一方、「公式戦なみ」という紅白試合などを通じて来るべき時に備えた。苦しい時期を「一人の脱落者もなく乗り切った」(大悟法監督)新生明豊は、昨夏の大分大会から公式戦に復帰。初戦敗退という結果に終わったが、「試合ができる喜びで涙が流れた」と大悟法監督。
 苦しい時代を知る今夏のチームは、トーナメントでも精神面の強さを発揮。厳しい試合が続いたが、普段の生活、練習で培った最後まであきらめない姿勢を貫き通し、最激戦区を突破。再出発から3年目の夏に、甲子園出場という最高の結果を自分たちの手で勝ち取った。

 

投手陣中心に進化 「手堅い守り」にもメド

 「投手を中心とした手堅い守りがようやくできた。そんな気がする試合でしたね」。国東との決戦を終えた直後、大悟法久志監督はこう振り返るとともに、成長を続ける選手たちに手ごたえを感じていた。
 明豊の前評判は、投手力がやや低く、どちらかといえば打のチームというイメージだった。初戦の大分南戦がそのイメージを象徴した試合で、終盤に継投の投手陣がつかまり、リードを許し、自慢の打線でひっくり返すという展開だった。
 「大会序盤は、投手陣にしっかりとした軸がなかった」と指導陣は振り返る。だが準々決勝の豊府戦あたりから、故障で出遅れていた山本が徐々に試合勘を取り戻し始め、戦いぶりが変わった。
 奇跡の大逆転となった準決勝の柳ケ浦戦も「力だけで逆転できる状況ではなかった。さまざまな要素が加わった結果だが、基本は山本が踏ん張り、3失点で抑えてくれたこと」と大悟法監督。決勝の国東戦も同様で、打線はやや湿っていたが、山本の力投と堅守で守り勝った。
 「守りが計算できればどんな相手にも対応はできる。甲子園ではやはり守りですよ」と大悟法監督。選手の意識も高まり、練習でも大分大会で得た反省点の克服に真剣に取り組んでいる。投手陣の軸として期待される山本は「まだ成長できる。自分の投球をしたい」と抱負。山本に負けじと、井門淳は「無駄な四死球を出さず、自分のベストピッチをする」、高田は「任されたイニングをしっかり投げたい」、大山は「低いボールでコースをつく」、田辺は「救援として役目を果たしたい」とそれぞれ意気込む。
 野手も投手陣をもり立てようと懸命。捕手の小松、冨貴、竹村の3人は「声を出し、リードで投手陣を引っ張りたい。最高の状態で送り出したい」。内野陣も「イージーミスをしない」(福沢)、「いいリズムで投げられるよう踏ん張りたい」(工藤)、「エラーをしない」(江藤)と決意を口にし、外野陣の中城弘、田中も「ノーエラーです」と声をそろえた。
 大分大会での失策は5試合で4。大悟法監督は「多いですね。限りなく無失策でないと厳しい。バント守備時の連係、カバーなどをやり直して、チームの熟成度を少しでも高めたい」と話していた。

 

状況に応じた攻撃 高まる意識、熟成度アップ

 大分大会5試合で3割5分9厘のチーム打率を残した明豊。主砲工藤を軸とした打線は「好球必打。ボールを打たない」を基本に、大分大会で暴れた。だが大悟法久志監督は満足していない。「甲子園ではより細かなことが要求される」と、一つ一つのプレーの精度アップを狙っている。
 今夏の明豊打線は、1番に中城弘、2番に菅と中城尊、3番に黒田と井門亮、4番に工藤、5番に田中、6番に小松、7番に福沢、8番に藤田、9番に投手―が基本。工藤が軸だが、上位、下位に特別大きな力の差はなく、どこからでも好機をつくり、得点につなげられる。だが全国レベルの投手が相手となると、ただ打つだけでは勝機は見えてこない。
 「連打は難しい。だが打つだけが攻撃ではない。バント、走塁などを含めた的確な状況判断が最も重要になる」と大悟法監督。甲子園で勝つためにと、残された練習時間を『しら真剣にやる』を掲げた。「料理と同じで、どれだけの調味料を持っているかが重要で、瞬時にどの調味料を使うかを判断しなければならない。引き出しからすぐに出せるように、練習から本気で臨まねば本番では出てこない。やらされているうちはだめ。自らやらなければならない」と大悟法監督。
 選手たちの意識も高まり、少しずつチームの熟成度は上がってきた。中城弘は「チームを活気づけるためにも野手の間を抜く打撃をする」、菅は「リズムをつくりたい。足でかき回す」、中城尊は「基本のセンター返しを心がける」と燃え、黒田は「数少ない好機を生かす」、井門亮は「4番につなげる打撃をする」と抱負。主砲工藤は「走者をすべてかえす気持ちでフルスイングする」と闘志をかきたてている。
 5番の田中は「甘いボールを見逃さない。バントもしっかり練習する」、小松は「好機で回ってくることが多い。粘り強い打撃をする」とそれぞれ話し、福沢は「大きいのはいらない。安打でつなぐ」、藤田は「得点圏に走者がいれば、絶対にかえす気持ちで打席に入る」、また木村は「代打でみんなの気持ちにこたえたい」、奥田は「足を生かして好機を広げたい」と気合を入れる。
 大悟法監督は「守りも同じだが、日ごろやっていないことを試合でやれと言っても無理。しっかりと基本を見つめ直すことが大事。柳ケ浦の監督時代にベスト4に入った。あのときはちょっとしたきっかけでひと伸びし、プラスアルファの力を発揮した。大分大会5試合の貴重な経験を整理し、心・技・体ともに最高の状態で甲子園に乗り込みたい」と話していた。


Copyright (C) 2004 press 9. All Rights Reserved